2013/03/01

備忘録~アベノミクス

一日遅れた月例経済報告は、2か月連続の上方修正となりました。基調判断の文言はこんな風に変わっています。
12月:景気は、世界景気の減速等を背景として、このところ弱い動きとなっている。
  1月:景気は、弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる。
  2月:景気は、一部に弱さが残るものの、下げ止まっている。
 各論では「個人消費」「生産」「企業業績」「業況判断」が上方修正されました。お見事に景気は上向きです。やはり昨年10月がボトムでありますね。資料編を見ていると、生産の動向あたりは驚かないのですが、消費マインドの持ち直しはまさに衝撃的なほどです。なんでこんなに上向きなのか。現金給与は全然増えていないのに、消費は伸びているという点が面白い。
 おそらくは株価の上昇により、資産効果がでていることがひとつ。特に団塊世代の方々の多くは、いわゆる「2007年問題」当時に退職金を受領し、リーマンショック前に投資信託などを買ったケースが多いと聞きます。その場合、元本割れして塩漬けになったりしていると思われますが、昨今の株価上昇はある種の「癒し」効果があるのではないか。「俺たちに現金給与なんて関係ない。でも気分がいいから、久々にちょっと景気よく行こうか」、ということなのでしょう。
 もうひとつ、不動産が動意づいているという話をよく聞きます。これはもうモデルルームが一杯だとか、売値より少し下で指値したら入札になっちゃったとか、それも東京都内や軽井沢あたりの高級物件がそうなっている模様。おそらくはキャッシュポジションを極限まで高めていた富裕層が、「これで本当に物価上昇が始まったら面白くない」とばかりに、今まで見向きもしなかった不動産投資に関心を向けているのでありましょう。「3/11」以降は、ニューヨークの物件を物色する動きもあると聞きますので、いやはやあるところにはあるものですな。
 他方、いろんな方面から寄せられる質問のナンバーワンは「アベノミクスで景気はいいみたいだけど、これで本当に日本の賃金は上がるのかね」です。直感的に言って、答えはノーでしょう。儲かっている企業はとりあえず賞与を増やすかもしれませんが、定昇やらベースアップやらは躊躇するはずです。そもそもこれだけ非正規社員の比率が増えてしまったのは、医療やら年金やらで正社員を抱えるコストが上がってしまったからでしょう。つまり高齢化社会のコストを安易に企業に負わせたことのツケが、全体的な賃金の伸び悩みという形になっている。
 なおかつ失業率は4%台と、先進国では珍しいくらいに低いわけで、ちゃんとワークシェアリングも行われている。これで賃金の上昇をと言われても、あんまりリアリティは感じませんなあ。この矛盾、いつどこで表面化するのでしょうか。

『溜池通信』より