年を取るなかで失望ではなく満足を決定するものは何なのか。
米ハーバード大学の精神科医、ジョージ・バイラント博士はこれまで著名なハーバード・グラント・スタディーから、心理的適応と成人期の発達に関する知恵を抜粋してきた。この研究では1938年以降今日まで、ハーバード大学在籍者とボストン地域の数百人の生活を追った。最高齢の人々は現在、90歳代になっている。この調査に関するバイラント博士の最新著書は「Triumphs of Experience」。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、カリフォルニア州オレンジ郡の自宅にいるバイラント博士に電話で話を聞いた。以下はその会話からの抜粋。
WSJ:研究対象の中でどういった人々が人生の後半に後悔を感じている傾向があるのか。
バイラント博士:後悔を感じているのは真に成熟しなかった人々だ。仕事から充実感を得たことがなく、パートナーとの親密な関係を維持しなかった人々だ。こうした人々は振り返って、結婚しておくべきだったとか、もっと好きな職に就いておくべきだったと考える傾向がある。
WSJ:満足感の高い人々との違いは。
博士:より満足している人々は過ぎ去ったことを悔やまない生き方を習得している。こうした人々はうまくいったことを満喫する方法も会得している。明確な昇進経路もなく人生を通して仕事を転々とした人がいた。それでも、この男性は1日の終わりに、大いに満足を感じていた。というのも、こうした職はどれも人助けに関連していて、この人は意味があると考えていたからだ。
WSJ:こうしたことからわれわれが学べることは。
博士:手に入らなかった機会について失望感を味わっている人々に、自問の角度を変え、選択したことから何が得られたかに焦点を絞るよう求めた。短期間の結婚以上に持続する関係を持ったことのない男性がいて、この男性は機械工としての自分の職業がそれほど好きではなく、人生に大いに幻滅していた。その後、50歳代のこの男性は年上の女性と幸せな結婚生活を送り、彼女の教会に行くようになり、信徒の書籍の世話をするようになった上、教会の会計係兼出納係として初めて真の天職を見つけた。
WSJ:引退に向けて準備する最善の方法はあるか。
博士:退職後に幸せな生活が送れるかどうかを判断するには、事前に良い休暇を取ってみることだ。年中無休の仕事のスケジュールから3週間以上離れ、小学4年生がやるようなことをやってみる、つまり遊ぶことだ。ウィンストン・チャーチル英元首相をモデルとすることだ。つまり、自由世界の統治やノーベル文学賞受賞さえ過去のこととして手放し、引退して絵を描いた。
Diane Cole(ウォールストリートジャーナル日本版より)