落語は現世肯定の芸であります。
大きなことは望まない。泣いたり笑ったりしながら、一日一日が無事にすぎて、なんとか子や孫が育って自分はとしよりになって、やがて死ぬんだ…それでいい、というような芸です。
その基盤とするのはごく普通の「常識」、これであると思います。
わたしがむかし、師匠米団治から言われた言葉を最後に記します。
『芸人は、米一粒、釘一本もよう作らんくせに、酒が良えの悪いのと言うて、好きな芸をやって一生を送るもんやさかいに、むさぼってはいかん。ねうちは世間がきめてくれる。ただ一生懸命に芸をみがく以外に、世間へのお返しの途はない。また、芸人になった以上、末路哀れは覚悟の前やで』
桂米朝「落語と私」より
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