春がそれだけ弱まってくる
ひとひらひとひら舞い落ちるたびに
人は見えない時間に吹かれている
光が葡萄の丸い頬をみがく
夏がそれだけ輝きを増す
内に床しい味わいを湛え
人は見えない時間にみがかれている
雨が銀杏の金の葉を落とす
秋がそれだけ透き通ってくる
うすいレースの糸を抜かれて
雪がすべてを真白に包む
冬がそれだけ汚れやすくなる
汚れを包もうと また雪が降る
私は見えない時間に包まれている
雨が銀杏の金の葉を落とす
秋がそれだけ透き通ってくる
うすいレースの糸を抜かれて
雪がすべてを真白に包む
冬がそれだけ汚れやすくなる
汚れを包もうと また雪が降る
私は見えない時間に包まれている
(吉野弘 心の四季)
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